光二朗くんから紹介を受けました。爆速帰宅の有田です。
あの日、十一月十五日の朝、私が洗面台の前で鏡の中に自分とは異質の何かを見出した時、それは、あたかも森の奥深くでひっそりと白い茸が生まれるように、私の後頭部に存在していた。私は、ただ、呆然とその、髪によって隠されていた皮膚の、痛々しいほどになめらかな空白を指でなぞってみた。
髪生えぬ もう生えぬやも。
その翌日、私はその空白の広がりを恐れ、ただ嘆き悲しむことしかできなかった。しかし、私の嘆きとは無関係に、世間はクリスマスに向けて、街のあちこちに光の粒を撒き出し、その光は日毎にその輝きを増していくようだった。
二十一日から二十四日にかけての、NF(ノヴェンバー・フェスティバル)の喧騒も、今の私には、まるで遠い異国の祭りのようにしか感じられなかった。私は、ただ自分の頭にある、その、日々確実にその領土を広げつつある「不在」の場所と、眼前に迫った試験の、その、あまりに巨大な「存在」との間で、身を引き裂かれるような思いをしていた。
三十日の模試、そして十二月一日のその結果は、私を更なる絶望の淵へと突き落とした。合格という文字が、私の髪と共に、どこか遠くへと消え去ってしまったかのように思えた。
七日、あと一週間。予定していた勉強は、あたかも指の間からこぼれ落ちる砂のように、少しも進捗を見せない。焦り、そして、その空白への恐怖が、私から眠りを奪っていった。
八日、気づけば一日が終わっている。CF、事業分離、企業結合。どれもが、私の前で冷酷な顔をして立ちはだかっている。
九日、監査論。このままでは終わらない。時間は、ただ、無情に過ぎ去っていく。
十日、そして十一日。私は、深い絶望感に襲われ、勉強に手をつけることさえできなかった。机に向かえば、動悸が私を苦しめる。私は、ただ、自分の頭の空白を鏡で確認し、その、日増しに広がっていく空白に、自分の命さえもが吸い込まれていくような、そんな錯覚に陥っていた。
十二日、あと二日。私は、最後の力を振り絞った。この一週間、私は、ただ、無心に、全体を一周することに、全神経を注いだ。
十三日、会社法、監査論。苦手な分野をもう一周。しかし、意外と忘れているところも多く、再び深い絶望が私を襲った。前夜は、三時まで寝付けず、ただ、その空白への恐怖と、試験への不安とが、交互に私の心に押し寄せてきた。
十四日、試験当日。五時に、恐怖で目が覚めた。二時間しか眠れていない。私は、最後の確認を終え、同じゼミの茂木、李さんとともに、試験会場付近の神社でお参りをした。
冷え切った朝の空気の中で、茂木さんと李さんが柏手を打つ音が、私の心に深く染み渡っていった。私は、自分の頭の空白を、そして、その空白が象徴するすべての恐怖を、ただ、静かに受け入れた。そして、その瞬間、私の中に、ある種の、透明な幸福感のようなものが生まれてきた。
それは、すべてを失った者が感じる、あの、不思議な安らぎのようであった。私は、茂木さんと李さんに、ただ、静かに微笑みかけた。そして、私たちは、その、運命が決まる試験会場へと、一歩を踏み出した。
髪立ちぬ いざ生えめやも
次は私同様、髪のお悩みを抱える中村幸平くんです。

