OB寄稿 左近成弘 (平成5年卒)(90周年記念誌より)

2012/04/17

「学生スポーツの意義」
   左 弘(H5年卒・H4年度主将)(清風南海 経 FW

 現役を引退して20年が経ちました。正直、引退後はOBとしてほとんど現役の試合を観戦することもなく週明けにご送付いただくメールで近況を知ったり、時間のあるときにHPの現役メンバーの顔ぶれを見たりして懐かしく当時の自分たちとだぶらせています。(世代が変わっても京大ラグビー部メンバーの顔つきはいつもよく似ています)

 今回90周年記念誌への投稿の依頼があり、OB会費を10年分まとめて払うような僕が年度を代表して書くのも甚だ僭越ですが、現役の皆さんへの僕らの自己紹介のつもりで書きたいと思います。少しでも当時の京大ラグビー部の思いが伝わると幸甚です。

☆三好先生☆
 僕らの学年は1年生の時に監督に就任された「三好(郁朗)先生」の世代です。普段は「三好監督」ではなく「三好先生」と呼ばせていただきました。それは三好先生が単にフランス文学の教授であったからではなく、三好先生からラグビーを通じて様々なことを学ばせていただいた「師」として感じていたからです。

 当事、先生が頻繁に「学生スポーツの意義」という言葉を使われていました。今思えば、頭の悪い僕にはその意味をあまり深く理解できていなかったかもしれません。現在勤務される京都嵯峨美術大学での三好先生のプロフィール欄に「学生諸君にはあらゆることに積極的な関心を持ち、楽しく充実した学生生活を送ってほしい」という言葉を見つけました。
 「楽しく充実した学生生活を送る」ために当時日本一を争っていたアメフトの友人のように大学生活のすべてを捧げて学生の頂点を目指すことも1つの方法だとは思います。でも僕らがプロスポーツ集団のように「勝負に勝つ」という1点のみを目指してラグビーだけに明け暮れたかというとそれはウソになります。
 Aリーグでご活躍された大先輩の方々からすると「だからお前たちはB・Cリーグを行ったり来たりしていたんだ」と叱られるかもしれませんが、少なくとも僕らはラグビーに対してもひた向きに取り組み、「楽しく充実した学生生活を送る」という本来の目的を全うできたと自負しています。
 「勝負に勝つこと」でスポーツの楽しさや充実感が得られるのも事実ですが、学生としてもっと大切なことはそのプロセスにおいて友情を育み、仲間を思いやり、互いに切磋琢磨して、その仲間のために自分の責務を全うする、相手に対しても全力で勝負に挑み、勝敗にかかわらず、お互いの健闘を称えあう、そういった健全な精神の育成に他ならないと思います。
 そういう意味では、むしろラグビーの技術以外で教えられたことのほうが社会に出て役に立っているかもしれません。自発的な行動を促し、未熟な僕らにさえ大人として常に向き合ってくれた三好先生には心より御礼申し上げます。


     

☆夏合宿。山中湖から菅平へ☆
 当時の夏合宿は山中湖で行われていましたが、対戦相手が限られていたことと1つ上の先輩方から「来年の合宿先を変えてみたら」というお話もあって山中湖での夏合宿後に何の縁もない菅平へ来年の合宿所探しに出かけました。
 まずは菅平高原観光協会で来年夏合宿ができそうな場所を問い合わせましたが、中心地から近い便利な場所は皆無で、たった1つ可能性があったのが中心地から一番離れた「佐久山荘」でした。
 一縷の望みをかけてその足で佐久山荘へ向かい、ご主人に何とか来年合宿ができるよう熱心にお願いしたのを今も記憶しています。ご主人はとても気さくな方で急な来訪にもかかわらず、「ちょうど看板になるチームを探していた」と言って毎年常連客で埋まっている中、僕らの申し入れをその場で快諾してくれ、帰り際に土のグランドを見て「来年はここを芝生のグランドにしてあげる」と約束までしてくれました。
 今でも佐久山荘での夏合宿の案内をメールで見る度に当時の学生の頃の熱い思いとご主人の温かい眼差しが思い出されます。本当に有難うございました。

☆入替戦 天理大学☆
 昨年Aリーグで優勝し、大学選手権でも準優勝となった天理大学の活躍は素晴らしいものでした。20年前、Cリーグ2位でリーグ戦を終えた僕らの入替戦の相手はAリーグから降格してBリーグ7位で終えた天理大学でした。怪我で早々に戦線を離脱していた僕には観客席でチームの仲間を応援することしかできませんでしたが、チームは一丸となって接戦の末、天理大学に勝利しました。
 僕らの学年はAリーグを経験していません。しかしながら、いつかAリーグへ復帰したいという思いは先輩方から受け継がれ、そのバトンを後輩たちに託さなければという気持ちというか意地のようなものが試合に出る、出ないにかかわらず皆に存在していたように思います。
 試合終了後、僕に代わってチームを引っ張ってくれた芦田君が試合に勝った喜び以上に背中に負った荷物をおろせた安堵感でほっとした表情をしたのを昨日のように思い出されます。現役の皆さんにもそのバトンが今もなお受け継がれていることを信じています。

☆京大ラグビー部の1人として☆
 幸いにしてよき指導者の方、よき先輩方、よき後輩たち、そしてよき同期の仲間たちに恵まれて充実した学生生活を送ることができました。また社会に出てからも京大ラグビー部出身の大先輩と偶然にも出会い、旧知の仲のように酒を酌み交わすこともあります。
 出会った皆さんに共通していることは世代がどうこうではなく、皆とても清清しく、爽やかであり、でも少なからず情熱がある愛すべき人々だということです。僕はそこに京大ラグビー部の1人としての誇りを今でも感じます。
 現役の皆さんも京大ラグビー部員として信頼できる仲間たちと切磋琢磨する中で健全な精神を培ってください。そしていつか皆さんが社会に出たときにそういう共通の精神を持つ仲間としてお会いできる日を楽しみにしています。
 最後になりますが、現役の皆様がラグビーも含め、あらゆる学生生活が楽しく充実したものになるよう祈念いたします。
 がんばれ、現役諸君!

     卒業後の略歴:
1994年 株式会社博報堂入社
1999年 タイ博報堂へ海外出向
2006年 上海博報堂へ海外出向 
2010年 博報堂バンコクへ海外出向、現在に至る