京都大学ラグビー部80周年記念シンポジウム
2002/05/18

◎基調講演:
       「世界ラグビーの動向と日本のラグビー」
           宿澤広朗(日本協会強化委員長)


1.ビジョンと4つのターゲット
 日本ラグビーフットボール協会では、「ラグビー競技を誰からも愛され、親しまれ、楽しめる、人気の高いスポーツにする」というビジョンと、次の4つターゲットを定めている。
(1)代表チームの強化
(2)競技人口の増加
(3)競技力の向上
(4)観客数の増加
 特に(1)については「ワールドカップに常時出場し、2007年のワールドカップでベストエイトに勝ち残る」という具体的目標をかかげ、それがラグビーの起爆剤になるように力を入れている。

2.プロ化の必要性
 6年程前に、世界ラグビーがオープン化し、プロ化の流れが加速した。それ以降、プロ化した世界のラグビーと日本のラグビーの差は広がる一方である。スキルや体力の差というよりは、プロとアマがやるということにおいて大きく差が広がっている。
 そこで日本も、昨年度からオープン化を導入した。代表選手に限定した日本式のオープン化で、年間4ヶ月間、日本代表の活動に専念してもらい、その間の報酬をラグビー協会が負担する。それとは別に選手たちに、試合の出場料や勝利ボーナスというようなインセンティブを選手に渡す。2年目の今年は社会人選手30名が専属契約し、3月から7月中旬まで代表専属で活動をしている。

3.トップリーグの創設
 プロ化と同時にトップリーグの創設が代表チーム強化につながる。南半球のスーパー12、英国のプレミアシップリーグなどが、その成功例である。
 日本でも、トップリーグの創設を昨日(5月17日)の理事会で決定した。プロ化では遅れをとったが、トップリーグの創設においては北半球の6ヶ国や南半球の3ヶ国以外の、カナダ、サモア、フィージー等の国々に先行することになる。
 トップチーム同士でより激しい、厳しい試合をすることが強化につながると考えている。

4.ワールドカップでの戦い方
 第2回のワールドカップに出場した際、世界のラグビー関係者は、日本が1勝や2勝することにはまったく興味がないということに気付いた。彼らは、体の小さい日本が、どう体の大きい人たちと戦うのか、さらに、それは評価できるものかどうかを見ているのだ。たとえば、スコットランドなど「自分たちは小さい」と思っているチームは、日本の戦い方を「自分たちに参考になるんではないか」という目で真剣に見ている。
 ラグビーの最高の場がワールドカップで、そこで日本のラグビーが評価されることは、日本がそこで勝つのと同じぐらいの意味がある。そういうラグビーをつくるのが、我々の役目だと思う。

5.戦力、戦略、環境
 ラグビーの強さで一番大切なのは戦力だ。そして、戦略と環境、この三つが必要である。その意味で、早稲田はこれから強くなる。戦力は充実してきたし、清宮監督が非常に良いラグビーをやる。さらに新グラウンドを作り環境もいい。
 京大の皆様にも、戦力面については学生に勧誘を頑張ってもらうと同時に、環境面では、芝の良いグラウンドを大学OBで作って頂きたい。これは、ラグビーを80年やっている大学の責任じゃないかと思う。

6.大学ラグビーについて
 大学ラグビーは、日本ラグビーのちょうど中間というか、震源地というような位置にあるのではないだろうか。大学ラグビーが盛んになって、トップチーム、社会人のチームにどんどん人を供給する一方、大学ラグビーが良いラグビーをやることによって、それを目指す高校生が増える。現在、大学が中心の競技は数少ない。大学が今でも一番人気があるという特異性を、ラグビーのアドバンテージとして最大限に使う必要がある。それを維持すれば、高校生、中学生、小学生と裾野が広がっていくだろう。

7.京都大学の皆様へ
 京都大学の皆様には、大学ラグビーの創設者の一員という重い責任もあると思うし、関西での大学ラグビーのメンバーとして、「これが京都大学のラグビーだ」というものを作り上げてほしい。また、全国大会に出て良いラグビーをして頂きたい。さらに企業などで重責を担っている方が他の大学よりは圧倒的に多いのだから、OBの方々には表となり裏となってラグビーを支えて頂きたい。これもラグビーの総合力という意味では、たいへん貴重なことなので、その分野でも是非ご活躍いただきたい。
戻る