京都大学ラグビー部80周年記念シンポジウム
2002/05/18

◎パネルディスカッション:
   「学生ラグビ−をいかに盛り立てるか---学生チームの強化策」
パネリスト 宿澤広朗(日本協会強化委員長)
上田昭夫(慶應義塾大学蹴球部総監督、
        日本協会強化副委員長)
寺尾 寛(東京大学ラグビー部前監督、
        日本協会普及育成委員)
徳原永宅(同志社大学ラグビー部ヘッドコーチ)
市口順亮(京都大学ラグビー部監督)
モデレーター 村上晃一(ラグビー・ジャーナリスト、日本協会広報委員)

【村上】 今日のテーマは学生ラグビーをいかに盛り立てるかということ。しかし、それぞれの大学の目標や現状が違い、非常に難しいテーマではある。できるだけ、有益な意見が出るように進めたい。
 私は大阪体育大学でラグビーをやっていたが、当時は京都大学は関西Aリーグにいて、対戦した際はいつも苦戦した。まず、京都大学の現状を口火としてお話を願いたい。
【市口】 競技人口という問題をまず取り上げると、関西大学ラグビーで5年前は63チーム2500人だったのが、20%減って昨年は2000人を切った。特に国公立では30%以上減っている。部員数の激減がひとつ目の問題であろう。
 さらに、その中でも特にフォワードの選手が減少している。Aリーグはほとんど影響がないのだが、BCリーグではフォワードの数が非常に少なくなっており、大きな問題である。というのもスクラムトライや、フライングウェッジといってペナルティから集団でトライしていくようなケースもあるので、どうしてもフォワードの力は必要だからだ。
 私が、日本代表は(ワールドカップで)ベストエイトになれないと思うのは重量差があるからである。例えばジャパンとウェールズでは8キロの差がある。社会人と、慶應、同志社との差は8キロ。社会人に対して大学生が歯がたたないのは重量差のせいである。この差はそのまま大学リーグの中にもある。立命館などはフォワードを大きくすることに強化の重点を置いている。関西のラグビーはどちらかといえば、ミニミニスーパー12、ミニミニ神鋼という感じだ。
 以上3つの問題点に苦慮しているのが京都大学の現状である。
【村上】 東京大学も同じような問題を抱えているのか。
【寺尾】 市口さんのご意見と全く同じで部員がここ4、5年で激減しており、今年はBチームがやっとできるくらいの人数になってしまった。Aリーグの一部のチームを除いては、関東でもほとんどの大学が同じ状況。私は(部員集めに)本格的に取り組んでいる人がいないことが原因だと思っている。
 京大アメリカンフットボールの水野監督の人集め戦略は、ラグビー界でも正しく評価すべきだ。ああいう格闘技で京大が日本一になるなんてことは、常識では考えられない(笑)。水野監督はそのノウハウを本や講演で披露もしている。ラグビー関係者も、別の角度でのアプローチし研究しなければならない。いい人材を集めるというのが、まず何よりの強化なのだから。
 東大も部員は減りつつある。当世の若者気質や育った環境、価値観などが影響しているのではないだろうか。ラグビーの楽しさを多くの人に知ってもらい普及することが必要だ。我々も人材獲得について研究、検討しなければならないだろう。人集めとは家々を回って物を売るセールスマンと同じこと。地味で困難で、頭を下げてお願いして入ってもらうわけだ。けんもほろろに断られるとカチンとくるが、それを乗り越えないとチームの強化はできないだろう。
 また、高校時代ラグビーをやっていた経験者ばかりを集めてもたいしたことはない。東大や京大に入学する受験勉強と両立する程度のラグビー経験は経験のうちに入らない。また本当にラグビーに向いている人がラグビーをやっていたかというとそうでもない。柔道やサッカーなど違うスポーツで非常に運動能力の高い人に入ってもらえば、半年や1年で必ず良い選手になる。これが私が観察してきて思うことである。
【村上】 上田監督は、しばらく低迷していた慶應を復活させた方だが、どういう手法を取られたのか。
【上田】 慶應はスポーツ推薦がないので、百周年といっても大学が特別に人を入れてくれるわけではなかった。低迷していると競技収入も少なく強化にお金もかけられなかったので、ただもうがむしゃらにやった。部員数について言えば、慶應は今年1年生が35人入部し110名になった。附属の慶應高校も部員が60人いる。
 私は常に、与えられた条件の中で何をすればいいかということを考えていた。そこで、小学校からエスカレーターで上がってくる制度があることに着目。小学校5年から始まるラグビー部で、1人でも多くの選手が大学まで続けることが大切であると考えた。私や去年の野沢主将、ジャパンコーチの林雅人、昨年花園に出たチームの宮崎豊主将、ユニクロのファーストリテーリングの社長になる玉塚など、皆そうだ。
 入学制度には他に指定校推薦がある。なかなか大学は教えてくれないが、今年の水江主将は、洛北高校(京都)から法学部の指定校推薦で入ってきた。指定校推薦では、進路指導の先生や校長先生に理解していただいくことが大切だ。今年も2人ほど入っている。
 また、アドミッションオフィスというのもあるが色々な人が受けるため、合格率は10%と低い。何とかこの入学制度を理解して早目から準備すればいいだろう。今年はこれで7人が合格している。
 一番厄介なのは一般入試で、今年知る限りでは16人が受験、合格したのはたったの2人だった。さらに国立に受かればそちらに行ってしまう。
 スタートは人材を集めてくることだ。あとは、彼らに慶応ラグビーの魅力を教えたいと常々考えていた。慶應の良い点は、卒業後ユニクロの社長やら医者やらになるやつもいるから「人生は卒業してから、その倍ある。慶應に来たらレギュラーにならなくても大丈夫」などと言えることだろう。
 また、色々な意味で社会に出るための勉強ができる場にしようと海外留学制度も考えている。フランスのクラブ「コロミエ」と契約したし、オーストラリアのアカデミーに半年間行っている選手もいる。他にもアメリカのプロテニススクールに留学したりと国際交流も盛んだ。ラグビーというツールを使いながら勉強ができるということを一生懸命説得している
 進学校の子に対しては「君がもしスポーツ推薦で大学を選ぶのなら、この高校に来る必要はなかった。文武両道を目指しているなら大学でも同じ道を選ぶべきだ」と説得すると受けてはくれる。あとは入るかどうかだ。
 入った後については去年から学生たちに運営を任せ、彼ら自身でチームを良い方向に導けるようにしている。たとえば木曜夜はナイターで練習する。ナイター用ライトは百周年の寄付で付けたが、グラウンドは芝生ではない。関東学院や早稲田に比べて環境面では劣っているが、それを良い方向へ持っていこうと学生を激励しながらチームを作り上げている。
 選手たちには、勝つための努力が大切で、結果は後からついてくるということを教えるようにしている。勝つことではなく、4年間ないし5年間を振り返ったときに、最高の青春であったと自信を持って言えるようにしてほしいと思う。
 なぜ私が慶應のラグビーを強くしたかったかというと、100周年を迎えたときにもし弱ければ「今は弱いが俺がいた頃は早稲田に3連勝した」などと古いOBに言われかねない、強ければ自分の青春は良かったと皆にも言えるんじゃないか、と考えたからである。
 今も毎朝、「いい子いませんか、成績が良くて慶應でラグビーをやるように進学を目指している子はいませんか」と、高校の先生に電話をかけている。この地道な活動が110人の部員につながったんじゃないかと私は考えている。
【村上】 同志社は非常に優秀な人材がいながら勝てないという状況が続いているが、徳原さんはどのようなアプローチで強くしていこうと思っておられるのか。
【徳原】 同志社は人材は豊富だが、なかなか勝てない。そこで、本年度は監督制からヘッドコーチ制に戻して、全力で大学チャンピオンを奪回しようと運営にあたっている。
 優秀な人材が来てくれるのは、かつて同志社が低迷したときにOBが一体となって人材確保などにボランティアであたったおかげだと思う。ただし、勝てないのが現状なので、本年度は頑張って勝ちたいと思う。
【村上】 同志社はウィークデーのコーチは今年は置くのか。
【徳原】 現在はいないが、6月からヤマハの中尾晃君が来てくれる。
【村上】 大学ラグビーの場合コーチの問題が非常に難しい。慶應も去年からはウィークデーは学生だけでやっていると聞いたが。
【上田】 ずっとそうで林雅人はボランティアで来てくれていただけ。つまり元に戻ったということ。ただ今後は強化や人間を形成するために、現状でいいのかは検討課題だろう。
【村上】 体重差が非常に出てきた中で、学生独自のラグビーをどう作るか、具体的な意見を。
【市口】 今のラグビーは昔と体型が全く違ってきている。私は重量制、つまり85キロ以下でやるのがいいと考えている。昨年のチームは東大戦で一番いい試合ができたが、ああいう試合を高校生に見てもらえれば、「ラグビーってこんなに面白いのか」と思ってもらえるだろう。今年も高校ラグビーの準々決勝を見たが、30名が皆ゴールポストからタッチラインの間に集まってラグビーをやっている。こういうラグビーでは非常に難しい。重量制限すべきという結論に達してしまうゆえんである。
 そうなると高校ルールをもっと極端にして、例えばスクラムトライは2点、フライングウェッジから持っていくトライも2点。それからラインアウトモールからのトライも2点。さらに啓光とか大工大高のように、サイドにボンボン潜っていく。これは、もう1回潜ればすぐにペナルティだが、僕はペナルティしていい(笑)と、こういうルールにすべきだ。冗談ではなく、そうしていかないと、今の日本のラグビーは独特の風土というものができない。
 また、スピンパスとストレートパスの差をコンピュータを使って微分方程式で解くと、スピンパスの魅力が計算でパッと出る。あえてそういう技術を子供のころから付けていくべきではないだろうか。というのもラグビースクールの練習を見ると、とにかく体をぶつけている。これは190センチの90キロ、100キロの人と同じプレーをスクールで教えていることになるのだ。野球でのキャッチボールにあたるものがラグビーでは相撲のぶちかましだなどと言われるが、それではやっていけない。
 そうではなくて、やっぱりラグビーはパスだ。私は釜石でタッチフットボールをやかましく教え、基本はパスだと言ってきた。そして今、パスの仕方はどんどん発達してきている。
 少し話がずれたが結論を言うと、フォワードの体重制限という発想から、大学ラグビーを見直すべきじゃないかと思っている。
【村上】 強化サイドとして、この意見についてはどうか。
【宿澤】 ちょっとそこまでのことは考えていないが(笑)、私は日本人の小さいという特性を軽視してはいけないと思う。大型化が進むなか、小柄でも運動能力の高い人を使わなかった点に反省がある。それから戦力は人数ではない。早稲田でも私の時は部員は50人いなかったし、釜石や三菱自工京都に勝って日本一になった時も45人ぐらいだった。ところが150、160人いた時が一番弱かった(笑)。だから人数ではなくどういうラグビーを4年間指向するか、それをきっちりやれるかが大事なのではないか。
 そして部員が45人だったときも、選手がそんなに優秀だったわけではない。早稲田が35連勝したときのメンバーにもキラ星のような選手はあまりいなかった。その代わり全員が試合に出なければいけない、そういう機会があった。誰が出るか分からないから、監督コーチ上級生が必死で教えた。やはり戦力は人数ではなく質である。
 ただ当然、人数が多ければ良い人材があつまる確率が大きいので、もし人数を指向するなら増やすための手を打たなければならない。国立大学も公正でなくてはいけないが、公平である必要はない。京都大学ではラグビーを強くすると大学で決めればいい。私立はもっと色々なことを考えて大学に合うことをやっている。そういう独自性のあることはどんどんやればいいと思う。
 ラグビー人口について言えば、ラグビースクールの人口というのは減っておらず、少し増えているぐらいだ。ラグビースクールでは子供たちが楽しめるように、非常にうまく指導してもらっているという印象を持っている。中学校で受け皿がないのが問題。
 今、ラグビーの「汚い」「きつい」「危険」というイメージが、親がラグビーをさせなかったり青少年がしなかったりする大きな理由になっているが、これを裏返して「男らしい」「ダイナミックだ」というイメージに変えるのはそんなに難しいことではない。それが「きつい」とかいうイメージになってしまっているのは、我々ラグビーをやっている人の責任だから、いいイメージに変えるのも我々の責任である。
 どうやったらもっとラグビー人口が増えて強くなるかを考え、新しいことをやる場合には、ポジティブに考えていかなけれなならない。
 さて、体格の大きな国とどう戦うか。明日対戦するロシアも非常に大きい。初対戦なのでお互いによく分からない。ビデオを見て監督が指示しても実際グラウンドに立てば、かなりイメージが違うだろう。そうなるとキャプテンシーがかなり重くなってくる。また体力的ハンデのある日本がどう戦うのかということにも非常に興味がある。大きい相手にどう戦うか、良い見本になるのではないだろうか。
 「他のスポーツができなくても、ラグビーではポジションがあります」というのはラグビーの売り物になるので、ネガティブになる必要はない。太っていても構わない、スクラムが組める。小さくでもすばしっこければスクラムハーフへ。ラグビーの1つのポジティブな良さではないだろうか。
【村上】 日本の大学ラグビーは特殊だ。例えばニュージーランドではカンタベリー大学といってもオープンクラブで誰でも入れる。日本は大学の中でやるので、部員を増やすのが難しい。しかも、大学の登録メンバーでなければ試合に出られない。ケンブリッジ大学では30以上のカレッジにそれぞれチームがあって、トップの選手が全国代表として出てくるという話も聞いた。日本ではそういうことは可能なのだろうか。
【寺尾】 東大でも同好会があるが、今は枯れてしまって数人しかいない。だから学内にいくつもチームを作るのは難しい。むしろ、大学の枠を越えたチームを作る方向にあるのではないか。高校生は現実にそういう構成をしている。ラグビーをやりたいと大学に入っても、チームがないとか人が足りないとかいうのは気の毒だしもったいない。大学単位でチームができなければ、そういう形もあると考える。
【村上】 上田監督は、慶應の中で同好会とかと一緒にやろうという考えがあると聞いたが。
【上田】 慶應には、歴史の古いJSKSとBYBという準体育会のクラブが2つある。さらに理工学部にもクラブがある他、同好会もある。
 今、ラグビー協会の登録はチーム単位になっているが、大学単位で登録できるようにしてほしいと協会に申し出ている。人数が足りないところに体育会から貸すこともできるかわりに、慶應でラグビーをやる人たちはすべて体育会が窓口になってコントロールできる。体育会のグラウンドで同好会が練習してもいいし、そこで我々の練習を教えることもできるだろう。彼らも慶應ラグビーの仲間として認知して大切にしたい。ラグビースクールで教えている人たちには同好会でやっていた人が結構多い。そういう意味でも、1人でも多くの人を仲間にしていくべきだろう。
 海外に行くと一軍の試合より、同じクラスの仲間が沢山来ている三軍の試合のほうが観客が多い時がある。自分たちに合った相手と対戦するというのは盛り上がり方が全然違うものだ。そういうカードをたくさん組めるように、各大学が体育会のグラウンドを開放すればいいと思う。ただし安全面で考えなくてはならないこともあるだろう。このように、大学ラグビーではまだまだ、いろいろやれる余地がある。
【徳原】 普及ということではそういう考えも良いとは思う。けれども安全面でやはり難しいのではないか。イギリスでは芝生がそこらじゅうにあるという環境。その辺から手を着けたほうが普及の早道ではないか。
【村上】 今、大学ラグビーでは人気のあるチームとないチームがあるが、上田監督は観客を集めるための努力はどうしているのか。
【上田】 まず競技収入、さらにケンブリッジやオックスフォードのようにスポンサーについてもらいたい。ただし特定の企業は難しいから、OB会をクラブ化してスポンサードしてもらわなくてはいけないと思っている。
 手っ取り早いのは競技収入を増やすことで、そのためには観客を増やさなくてはいけない。競技収入は関東大学対抗戦の中から出るので、OBなどに7試合分まとめた「シーズンチケット」を買ってもらうということを考えた。昨年、一昨年は200セット売ったが、さらに300、400ぐらい売りたい。とにかく「観客が来ない」と言うのではなくて、自分たちの試合に最低限400人、来ても来なくても競技収入を確保するという考えでやっている。
【寺尾】 昨年からOBの組織改革を色々やっているので、OB自体の意識は相当高くなっている。観客動員というのは、そう簡単にいかないのでどうしてもOB頼りになる。最近気付いたことだが、隠れ東大ファンというのが意外といる(笑)。観客席の後ろの方で東大のラグビーの話なんかして頂くと嬉しくなる。そう考えると東大や京大も、もう少し広報宣伝を考えてもいいと思う。それがひいては、東大でラグビーをやってみたいという高校生が増えることにもつながるのではないか。
 先ほどの市口さんの話に楯突くわけではないが、関東では相撲取りみたいなチームでどうしようもないという印象はない。むしろ東大としては近場を攻めてもらったほうが楽で、大外回しされると追いつけない、という試合のほうが多い。2、3年前に筑波大と対戦した際、フォワードのサイド攻撃を全部止めたら前半7対6でリードした。ところが後半、足の速い選手に大外回しされたらボコボコ取られたという試合もあった。だから市口さんのような問題意識は、少なくとも関東ではないと思う。
【市口】 来年からトップリーグが始まると、高校生が大学を経由せずに直接トップリーグに入ってしまうのではないか。こういう時代が来れば我々弱小チームはまた頑張れるなあと思う(笑)。
 議論を聞いていると、我々と上位のチームとの問題点が違いすぎる。だから同志社などを通さないで全部トップリーグに入っていけば、もう一度京大や東大が(笑)やっていけるんじゃないかという気がした。
 これまでに大西先生や星名先生によって、きっちりした教科書ができたし、早稲田出身で防衛大監督の山本巧君も非常にいい本を出しているが、我々中小企業にも目を向けた指導書も書いて頂きたいと思う。というのも日本のラグビーはトップのほうにしか向いていないような気がするからである。
【宿澤】 トップだけが強くなれば良いとは絶対思っていない。トップを強くすることの目的はラグビーをみんなが見て、プレーしてもらえるようにすることにある。オープン化についても日本代表だけが強くなって各企業チームが弱くなってしまったら、それは本意ではない。共存が狙いで、そのために独自のスキームを作ったのだ。最終目的は、あくまで普及なのである。
 どのラグビーがいいのかというのは一概には言えないが、私はいいラグビーが勝つのではなく、勝ったラグビーがいいラグビーなのだと思う。我々は競技スポーツをやっているわけで、今勝っているラグビーはいいラグビーなのだ。たとえば関東学院は非常にいいラグビーをしていて、フォワードが押されてもバックスで勝負して取る力を持っている。やはりバランスの取れたいいラグビーをしているチームが勝つ。またサントリーも非常にいいラグビーをする。彼らのいいところは、体が大きいとか外国人選手がいるとかそういうことではなく、ものすごくフィットネスが高いということである。80分間スピードラグビーをやる能力を蓄えたことが、サントリーが勝つ理由なのだ。
 いいラグビーが勝つ、これは競技ラグビーの厳しさで、理想があっても勝てなければいいラグビーではないと思う。
【上田】 指導書については、日本協会が正式に指導してほしいことを書いたものが出来上がりつつある。しかし皆がそれに基づいてやるとチーム色がなくなる。例えば、一時期慶應がアップアンドアンダーしかできなかったのは、それが当時一番力を発揮できる形だったからだろうし、与えられた人材の中でどうやれば力を出せるかを考えることが大切だろう。
 僕はラグビーは非常に知的なスポーツだから面白いので、体重が75キロ以下に限定されたら非常につまらないスポーツになると思う。
【市口】 85キロ!(笑)
【上田】 去年の野沢主将は身長173センチで94キロあった。しかし体脂肪は10%以下だった。太っているだけでは、はっきり言って今のラグビーでは苦しい。しかしポジションはある。太っているだけの選手にやられないラグビースタイルを考えるところに知的さがあるのであって、コンタクトを避けるとかのスタイルを考えるべきだ。
 例えば、フィジーというのは暑い国である。海岸でラグビーをやるのだが触ると暑いので接触を嫌がる。その結果フィジアンマジックというセブンスが発達した。そんなことがあるので「これが京大だ」「これが東大だ」などというのがベースにあって、与えられた人材で色をつけて変わっていくということが、大学ラグビーファンの期待するところではないだろうか。たとえば早稲田はオープンオープンといっても実際にはオープンにいってない。でも観客はイメージが焼きついているから期待する。私達は、そうやってつかんでいるファン層を放したくないと考えている。
【市口】 一つだけ付け加えておくと、僕は釜石の監督時代に宿澤君に負けているので、本当は偉そうなことは言えない(笑)。
【村上】 京大は非常にいいラグビーをしていて、2、3人のラックで出して、ロングパスでつなぐということをやっていて、本当によく研究されているということを付け加えさせていただきたい。
 最後に、会場から質問を受けたい。
【質問1】 サッカーに比べてラグビーの記事は本当に小さい。新聞社はラグビーをもっと取り上げてほしい。それからテレビ中継では、だいたい2月の日本選手権で中継が終わってしまい、秋まで待たなくてはならない。だから、明日のロシア戦をテレビ中継してほしいが、おそらくないだろう。テストマッチなども関西ではほとんど見れないので、深夜でもいいので、ぜひやってほしい。
 こういったシンポジウムも、東京だけではなく全国各地で、協会の普及費用を使ってやってほしい。
【村上】 テレビは、Jスカイスポーツで全部やっている。あまり見て頂いていないので寂しい感じがする。
【質問2】 ここ10年、大学の試合を見に行って思うことは、OBの数は多いのだが、学生の人数が極端に減っているということだ。OBは当然大事にしなければならないが、やはり学生が盛り上がらないとみんなも興味がもてないだろう。だから、学生にはもう少し安く見られるようなシステムを作っていただきたい。
【宿澤】 関東と関西で若干違うかもしれないが、確かにラグビーファンの年齢層は高い。それを若返らせることは非常に大事なことだろう。大学のラグビー部を含めた運動部はOB会に大きく依存している。やはり大学がもっと主導権を握って頂きたいと思う。私設応援団やチアガールなど、いろいろ考えているところもあるようだが。入場券については前売りを買ってもらえれば安くなるようにはなっている。我々も、若い人や女性ファンを増やそうということを念頭に、今後も取り組んでいきたい。
【上田】 現役の部員に例えば5枚売って来い、ということにするのもいいだろう。自分たちのチームを愛する人間は、来てもらう努力をするべきだ。もう親任せ、OB任せの時代ではないのだから。自分のチームの大学生の応援が少ないのは、やはり部員の責任だと思う。だから我々は200枚もシーズンチケットを売るし、学生にも自分で売って来いと言ってある。関東でいうと慶應と法政が前売りの実績が多い。努力をしなければ自分たちの学生は来ないわけで、それは野球でもそうだ。大学スポーツの関心が全般的になくなっていく中で、ラグビー協会やOBがやっても、身近な人に勧誘してもらわないと観戦には来てもらえないと思う。
【徳原】 女性と子供を安くすべきだ。子供には必ず大人もついてくるわけだし。宿澤さんにぜひご検討いただきたい。
【質問3】 高校では西が強いのに、なぜ西の大学は1回戦で負けるのだろうか(笑)。ここ2、3年は特に、西の大学はよくて(大学選手権)2回戦突破。決勝まで行くなんてことは滅多にない。
【徳原】 今日は京都大学のシンポジウムで、同志社大学のではないが、今の言葉を激励の言葉としてがんばりたい。ありがとうございます(拍手)。
【村上】 おそらく人材が向こうにいってしまうということだろう。
【宿澤】 人材は一杯いる。同志社には高校代表のいい選手がたくさんいるし、絶対強くなる。同志社が強いと大学ラグビーも大変盛り上がるので、ぜひ同志社に、慶應・早稲田・明治・関東学院なんかと1点を争うような試合を見せていただきたい。期待している。
【村上】 そろそろ時間が来たので終了したい。色々な意見が出、それぞれ立場が違うので、まとめるのは難しく結論がないが、今日出た意見が皆さんが大学ラグビーを考える上でのヒントになれば、パネルディスカッションは成功だったのではないか。
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